2013年9月17日火曜日

ムンクの生誕150年記念展開催

図1 Edvard Munch: The Scream, 1893,
Tempera and crayon on cardboard,
91 x 73.5cm, National Museum of Art,
Architecture and Design, Oslo,
© Munch Museum / Munch-Ellingsen Group /
BONO, Oslo 2013,
Photo: © Børre Høstland, National Museum,
© Munch-museet / Munch-Ellingsen Gruppen /
BONO
2013年はエドヴァルド・ムンクの生誕150年にあたり、母国ノルウェーではムンク・イヤーに沸いている。首都オスロにあるオスロ美術館とムンク美術館では、「ムンク150」と題した展覧会が共催されている。ムンクが「私の子どもたち」と呼び、2万点以上残した作品の中から絵画220点、版画等50点を選出し、ムンクの画業を振り返る。

ムンクは生と死を主題とした作品で知られるが、それは幼い頃に経験した肉親との死別に起因する。母親はムンクが5歳の時に、姉は13歳の時に亡くなった。医師であった父はふたりを失ったことにより精神を病んでしまう。ムンクの初期作品《病める子》に描かれた少女は、結核で亡くなった最愛の姉である。次々に愛する家族を失った失望感や孤独、また自身も病弱であるために常につきまとう病や死への不安や恐怖などは彼の作品に大きな影響を与えた。

1892年にドイツのベルリンに移住すると、ライフワークとなる「生命のフリーズ」の制作を開始する。そこに含まれる作品には、愛や裏切り、不安、嫉妬、死などが描かれている。このフリーズの一部として《叫び》(図1)《吸血鬼》《マドンナ》などの代表作が生み出された。ムンクは生命のフリーズを全体として生命のありさまを示すような一連の装飾的な絵画として考え、それぞれ独立した作品ではなく、ひとつの交響曲のように共鳴しあうものとして制作した。1902年のベルリン分離派による展覧会において、それまでに描いた22点の作品で構成される「生命のフリーズ」を発表した。「ムンク150」展では、このフリーズが約110年ぶりに再現されている。


図2 Edvard Munch: The Sun, 1911, Olje på lerret, 455 x 780 cm, Universitetet i Oslo, Aulaen,
© Munch-museet / Munch-Ellingsen Gruppen / BONO 2013,
Photo: © Munch-museet , © Munch-museet / Munch-Ellingsen Gruppen / BONO
1909年、45歳の時にムンクはノルウェーに帰郷した。長い外国滞在の後に再び目にした故郷の自然は、ムンクに調和と古典的な作品への興味をもたらした。1916年、オスロ大学の講堂に11面からなる装飾壁画「アウラ」を完成させた。講堂正面に配された作品には太陽が力強く光を放ち(図2)、そのほかの壁面には太陽の光に祝福されるノルウェーの豊かな自然が描かれている。この作品の完成以後もチョコレート工場の装飾画「フレイア・フリーズ」や、オスロ市庁舎のための装飾画など精力的に活動を続けた。絶望に苛まれていた《叫び》から希望に満ちた《太陽》を描くに至ったムンクは、1944年1月23日に80年の生涯を閉じた。

本展の展示会場は二会場に分かれている。1882-1903年の作品はオスロ美術館、1904-1944年までの作品はムンク美術館に展示されている。「ムンク150」展は2013年10月13日まで。
オスロ美術館 National Gallery of Norway
Universitetsgata 13
0164 Oslo, Norway
+47 21 98 20 00
www.nasjonalmuseet.no/en/
ムンク美術館 Munchmuseet
Tøyengata 53,
0578 Oslo, Norway
+47 23 49 35 00
www.munch.museum.no
開館時間(共通):
月-水、金-日 10:00-17:00
木 10:00-19:00

2013年9月6日金曜日

“ルーヴルの女神”「サモトラケのニケ」、大規模修復スタート

©Victoire de Samothrace, Musée du Louvre
パリ・ルーヴル美術館のギリシャ彫刻の傑作「サモトラケのニケ」と展示エリアの修復が、9月から始まりました。
「ニケ」は勝利の報を伝える女神のこと。紀元前2世紀に作られ、1863年にエーゲ海のサモトラキ島で発見されました。羽を広げたまま船の船首部分に舞い降りた瞬間をとらえた姿は、力強さと美しさを兼ね備え、見るものの心を奪います。

世界中から集まる美術ファンにとって、修復作業のためにニケ像がしばらくの間鑑賞できなくなるのは残念なことですが、本来の大理石の美しさを取り戻し、来年春には再び登場する予定です。
また、ニケの素晴らしさを引き立たせているのが「ダリュの階段」を含めた展示スペースです。ルーヴルを訪れた人は、この階段の頂上に立つ「女神」の姿を目にします。そして、この階段を一歩づつのぼりながら最上段のニケ像に近づきます。まさに傑作の展示にふさわしい環境が作り出され、ルーヴル美術館で最も成功した演出ともいわれています。

この階段を含め、天井や壁も含めた展示エリア全体も修復され、2015年に完成する予定です。
ニケ修復についての詳細は、以下のルーヴル美術館の特別ウェブサイト(日本語版)に掲載されています。またルーヴル美術館では、この歴史的修復工事のために個人からの寄付キャンペーンをスタートさせました。ご関心のある方は是非ウェブサイトをご参照ください。
www.louvresamothrace.fr/jp/

日本テレビホールディングスも「サモトラケのニケ」修復を支援しています。
www.ntvhd.co.jp/pressrelease/2013/20130904.html

2013年8月23日金曜日

「フェルメールと音楽―愛と余暇の芸術」展


もしも音楽が愛の糧であるならば、奏で続けよ。
―――シェークスピア『十二夜』

17世紀のオランダでは、画家たちは音楽に強い興味を抱いていた。オランダ絵画黄金時代に制作された絵画のうち一割以上が音楽をモティーフに描かれ、ヨハネス・フェルメールにいたっては現存する36点中12点にものぼる。ロンドンで開催中の「フェルメールと音楽」展では、そのうち5点のフェルメール作品に加え、ヘラルト・テル・ボルフ、ハブリエル・メツー、ヤン・ステーン、ピーテル・デ・ホーホなど同時代の画家たちの音楽にまつわる作品を展示している。

オランダにおいて音楽は複雑で高尚な芸術というものではなく、全ての階級の人々にとって身近な娯楽であった。彼らは自分たちで演奏したり歌ったりできる室内楽のようなシンプルで親しみやすいものを好み、友人宅に集まって演奏会をしばしば行うなどしていた。生活に密接した音楽は、絵画のなかでもさまざまな象徴として描かれた。肖像画では楽器や楽譜は描かれた人物の才能や階級を示し、日常生活の一場面を切り取った作品では描かれた人々の教養や社会的地位を示した。


さらに音楽はハーモニー(調和)が重要であることから、男女間の恋愛と結び付けられるようになった。とくに音楽のレッスンは未婚の若い男女が一緒にいても不自然でない数少ない情景として人気があった。メツーの作品では、音楽教師である男性がレッスンを中断して若い女性にワインを勧めている。(図1)背景にはシェークスピアの恋愛喜劇『十二夜』を描いた絵画がカーテンから覗いており、これからふたりに訪れる出来事を予感させる。

図1
Gabriel Metsu (1629 - 1667)
A Man and a Woman seated by a Virginal
about 1665, oil on oak
38.4 x 32.2 cm
The National Gallery, London, Inv. NG839
© The National Gallery, London
図2
Johannes Vermeer (1632 - 1675)
The Music Lesson
about 1662-3, oil on canvas
73.3 x 64.5 cm
Royal Collection Trust
© Her Majesty Queen Elizabeth II 2013

図3
Johannes Vermeer (1632 - 1675)
A Young Woman seated at a Virginal
about 1670-2, oil on canvas
51.5 x 45.5 cm
The National Gallery, London, Inv. NG2568
© The National Gallery, London


フェルメールが描いた《音楽のレッスン》(図2)では、ヴァージナルを演奏する女性とそれに聴きいる男性が描かれている。女性は演奏に集中しているようにみえるが、頭上の鏡に映る彼女の顔は男性のほうを向き、彼に心を寄せている様子がわかる。ヴァージナルの蓋には「音楽は歓びの伴侶、哀しみの薬」と記され、彼女の心情が暗示されている。当時、ヴァージナルは女性の声の象徴であり、ヴィオラは男性の声の象徴とされていた。女性の背後にはヴィオラ・ダ・ガンバが横たわり、ヴァージナルに合わせてハーモニーを奏でられるのを待っている風景。静謐な画面の中に男女のドラマが隠されている。

また、画家たちは鑑賞者を単なる傍観者としてではなく、絵画のなかでおこなわれる恋愛劇の当事者として画面に引き込もうと工夫し始める。フェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女》(図3)やヘラルト・ダウの《クラヴィコードを弾く女性》に描かれた女性は鑑賞者に魅力的な視線を投げかけ、横にあるヴィオラを手に取って演奏するよう誘っている。

音楽は17世紀オランダ絵画を読み解く鍵といえるだろう。

なお、本展覧会では17世紀のヴィオラやギター、ヴァージナルなどの展示に加え、同時代の音楽の演奏会が毎週木曜日から土曜日に開催されている。




「フェルメールと音楽―愛と余暇の芸術」展は2013年9月8日まで。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー The National Gallery, London
Trafalgar Square,
London WC2N 5DN
The United Kingdom
+44 (0)20 7747 2885
http://www.nationalgallery.org.uk/
開館時間:
月-木、土、日 10:00-18:00
金 10:00-21:00

2013年8月12日月曜日

歴史とデザインが隣り合わせのロイドホテル&文化大使館 (アムステルダム)


Lloyd Hotel & Cultural Embassy

一つ星から五つ星の客室が一つのホテルに混在するというスタイルは、ロイドホテルの他に類をみない。客室の中は、7,8人用の長いベッドとグランドピアノが置かれたり、コンサート用の防音設備を備えたり、バスタブとブランコを中心に置いた天井裏や、巨大なキッチンがあったり。オランダらしい遊び心あふれるデザインで埋め尽くされている。
可動式のインテリアも多く、廊下に置かれた家具も自由に使ってよい。一般のホテルとは逆に、浴室とトイレを、あえて部屋の中心などの目に触れる場所に備えたこれらの客室では、備え付けの間仕切りを出し入れしたり、ベッドを横目にシャワーを浴びたり、浴槽につかるという、普段の生活とは全く違う時間と空間の使い方を提供、提案してくれる。




五つ星の部屋。浴室部分のデザインはMVRDV。

アムステルダム港東側の波止場にあるロイドホテルの名前の由来は、建物の元々の所有主である船舶会社ロイド。南米に向かう移民の健康診断・宿泊場として建設され、当時は一日最大900人が寝泊まりしたそうだ。1935年にロイド社が倒産した後、ドイツの占領下におかれていた第二次世界大戦中には、対独抵抗地下運動により捕らえられた人々を収容する場所として使用された。終戦後は一般の刑務所として、また後に少年院として使用された期間を経て、80年代後半からはアーティストのスタジオスペースとして利用されるようになった。


アーティストが制作、暮らし、交流していた1989年から1999年。彼らによって、それまで陰鬱で閉塞的な印象を作り出していた壁が取り払われ、それまでとは一転して開放的な空間と雰囲気が生まれ、様々な人が行き交うようになったという。アーティスト達の開放的で独創的な精神は、ホテルの創始者であるスザンヌ・オクセナー、オットー・ナンにより、現ロイドホテル&文化大使館 Lloyd Hotel & Cultural Embassyに受け継がれ、様々な形で建物のあちこちに顔をのぞかせている。

建物をホテル用に改築するに際して最重要視されたことは、「暗い歴史からの解放」、「空間を生かしつつ遊びの感覚を入れる」ことであった。オランダの建築集団MVRDVは、建物の中央部分を吹き抜けにし、明るく開放的な空間を作り出した。建物内では、文化大使館というだけあって常に現代美術、デザイン作品に囲まれる。一例として、最上階にはスーチャン・キノシタの作品が、地元でも評判の高いカフェ&レストラン入り口にはアムステルダム在住の作家、渡部睦子によるインスタレーション「LLOYD LIFE」がある。さらにカフェ上層部には展示やワークショップのためのスペースと図書館が設けられていて、来館者は自由に歩き回ることができる。 デザインとアートが集約され、五感で体験する事ができるロイドホテル&文化大使館。歴史を踏まえ尊ぶその姿勢と発想に魅了された。

*館内の写真へはこちらをクリックしてください。

ロイドホテル&文化大使館 Lloyd Hotel & Cultural Embassy
Oostelijke Handelskade 34
1019 BN Amsterdam
The Netherlands
http://www.lloydhotel.com
t: +31205613636

2013年7月17日水曜日

仕事をするゴッホ展


図1 Vincent van Gogh Self portrait as a painter
1887-1888, Paris, Van Gogh Museum, Amsterdam
(Vincent van Gogh Foundation)
オランダのアムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館では、開館40周年を記念する展覧会「仕事をするゴッホ」が開催されている。ゴッホが画家として活動した10年間の成長過程を絵画150点をはじめ、素描、スケッチブック、手紙、絵の具やパレット等、総数200点で辿るものである。また、本展覧会はゴッホ美術館が8年間にわたって実施した絵画調査の集大成でもあり、ゴッホの絵画技術と実際の描画方法が詳しく紹介されている。

《画家としての自画像》(図1)は、制作意欲に燃える画家としての姿を描き出したとして、ゴッホの表情に注目されることが多い。しかしながらこの展覧会では、ゴッホが使用する画材に焦点をあてている。ゴッホは屋外用のイーゼルの前に立ち、方手にパレットを持ち、絵筆を握っている。絵筆は合計7本の平筆と丸筆である。平筆は面を塗るのに適しており、丸筆は細部の描き込みに適しているものだ。さらに、パレットに置かれた絵の具を分析した結果、二つの油壺の上にあるオレンジは「カドミウム・オレンジ」、その左に見える濃い青は「コバルト・ブルー」と「鉛白」を混ぜ合わせたものであると判明した。

図2 Vincent van Gogh Sunflowers,1889, Arles
Van Gogh Museum, Van Gogh Museum, Amsterdam
(Vincent van Gogh Foundation)
美術館の2階と3階では、科学調査の結果が写真や映像を使って分かりやすく説明されている。ゴッホは経済的理由から、しばしば一度描いたカンヴァスにまったく新しい別の作品を塗り重ねていた。ゴッホ美術館は塗り重ねられた可能性のある作品を、X線を使って写真撮影することによって、下にどんな絵が隠れているのかを明らかにした。そのほかにも、絵画から採取したサンプルを観察できる顕微鏡が置かれ、絵の具がどのように重ねられているのかを見ることができたり、絵の具の盛り上がりを手で触れて実感できるように作品の一部を立体復元したものが用意されているなど、さまざなま工夫がなされている。
図3 Vincent van Gogh’s Pallete from Auvers Musée d’Orsay, Paris
Photography: Erik and Petra Hesmerg

8月まで、ゴッホ美術館が所蔵する《ひまわり》(図2)に加えて、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の《ひまわり》が《ルーラン夫人の肖像》を中心に左右対称に並べて展示されている。これはゴッホがスケッチブックに描いた三連画を再現したものである。また9月以降は、《寝室》の3バージョン(ゴッホ美術館、シカゴ美術館、オルセー美術館所蔵)が一堂に会する。そのほかにも、ゴッホが使用した唯一現存するパレット(図3)や、4点しか残っていないスケッチブックのうち3点が展示される貴重な機会なので、ゴッホファンにはぜひとも訪れていただきたい。


「仕事をするゴッホ」展は2014年1月12日まで。




ゴッホ美術館 Van Gogh Museum
Paulus Potterstraat 7
1071 CX Amsterdam
The Netherlands
+31 20 570 5200
http://www.vangoghmuseum.nl
開館時間:
5月1日-9月1日、2013年12月27日-2014年1月5日9:00-18:00 (金曜日は22:00まで)
2013年9月2日-2013年12月26日、2014年1月6日-1月12日10:00-17:00 (金曜日は22:00まで)

2013年6月18日火曜日

フランス・ハルス美術館、創立100周年記念展


オランダのハールレムにあるフランス・ハルス美術館は、今年100周年を迎えた。それを記念して17世紀オランダ絵画の黄金時代を代表する画家フランス・ハルスと、彼と影響関係にあった巨匠たちの作品を集めた展覧会「フランス・ハルス- レンブラント、ルーベンス、ティッツィアーノとの共通点」が開催されている。大規模なフランス・ハルスの展覧会は25年振りのことである。

ハルスは人物画を得意とし、モデルの自然なポーズや動き、快活な表情など、まさに血の通う人間の姿を描き出した。《笑う少年》(図左)では歯を見せ無邪気な笑顔をみせる少年が描かれている。17世紀の芸術理論では笑っている表情を描くことは大変難しいとされていたが、ハルスは魅力的な笑顔をすばやい筆致で巧みに表現した。

美術館奥の大広間には、ハルスによる自警団の集団肖像画が集められている。17世紀にスペインからの独立を果たしたオランダでは、防衛と治安維持のために市民が自警団を組織していた。彼らはしばしば集団肖像画を画家に注文して描かせた。集団肖像画が描かれだした当初は、全員の顔が整然と並ぶ集合写真のようなものが多かったが、次第に画面に動きが導入されるようになり、団員達の宴会という設定が流行した。ハルスは団員一人ひとりの表情や個性を描き分けながらも、気の置けない仲間同士がにこやかに酒を酌み交わす、賑やかな宴会の様子を描いた。この部屋の中央には宴会の食卓が再現され、あたかも観客が彼らの宴会に紛れ込んだような気にさせられる。

美術館中庭
展示室では、ハルスとそのほかの画家たちが同じ画題で取り組んだ作品が比較できるように並べて展示されている。そのうちの一組が、1622年にファン・バビューレンが描いた《リュート奏者》と、その翌年にハルスが制作した《リュートを持つ道化師》である。ローマで修行を積んだディルク・ファン・バビューレンは、音楽を奏でる人物やカードを遊びをする人物など、カラヴァッジオ派が好んで描いたテーマをオランダにもたらした人物の一人である。ハルスはバビューレンによってもたらされた新しい画題に取り組み、楽器を奏でる人物を複数描いている。《リュート奏者》に描かれた人物は茶目っ気たっぷりに微笑み、音楽を心から楽しんでいるようだ。

ハールレムを活躍の場としていたハルスであったが、近年の研究において同時代の画家たちとの交流が明らかになった。今展覧会はハルスを中心として、レンブラントやルーベンスなど、17世紀のオランダ・フランドル絵画の影響関係をたどるいい機会になるであろう。

展覧会は7月28日まで開催(月曜日休館)。

フランス・ハルス美術館 Frans Hals Museum
Groot Heiligland 62
2011ES Haarlem
The Netherlands
http://www.franshalsmuseum.nl/en/
開館時間:
月曜日休館
火 – 金 10 :00 – 17:00
土、日 11:00 – 18:00

2013年6月1日土曜日

高嶺格がオランダで個展


カスコの外観
2011年3月11日に東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故が発生した。それ以降、私たちの間には、漠然とした放射能に対する不安が広がっていった。その見えざる不安を日本人の現代美術家・演出家である高嶺格(たかみね ただす)が映像作品として可視化させた。これらの映像作品「ジャパン・シンドローム―ユトレヒト・バージョン」は現在、オランダ、ユトレヒトのカスコにて紹介されている。





高嶺は同時代の問題をインスタレーションやメディアアート、パフォーマンスによって浮かび上がらせ、日本のみならず世界でも高く評価されている。例えば《ゴッド・ブレス・アメリカ》(2002年)は、アメリカが9.11以降イラク戦争に突き進むことに対する批判を出発点としたビデオ作品である。そこでは2トンの油粘土でできた巨像に「ゴッド・ブレス・アメリカ」を歌わせようと格闘する姿がクレイアニメの手法で映し出される。

Tadasu Takamine, Japan Syndrome – Yamaguchi Version, 
video. ca. 30 min, still, 2012. Courtesy of Casco
今回の展覧会は二会場で行われている。第一会場では「ジャパン・シンドローム―ユトレヒト・バージョン」が展示されている。《ジャパン・シンドローム》とは、公募で集まったパフォーマーが地元のさまざまな商店などに出向き、原発事故による影響や放射能汚染の懸念を投げかけた時のやりとりをもとに、高嶺が台本を作り、再現した会話劇のシリーズである。山口、関西(京都・大阪)、水戸の3バージョンがあり、これら3作品を同時に展示したのがユトレヒト・バージョンである。

オープニングの風景
商品の安全性をたずねた時に、店員は福島から離れた土地の作物や外国産の魚をすすめたり、客に同調して放射能汚染を危惧したりするものもいたが、多くは不安と恐れを垣間見せながら「検査済みだから大丈夫」、「空気中にもある物質だから問題ない」など、国や県の安全声明や学者の主張を繰り返していた。疑問を抱いていても、政府が言うから、みんなが言うから「安全」と言わざるを得ない消極的な賛同、もしくは積極的に「危険」といえない空気が全ビデオを通じて感じられる。福島に近い当事者としての水戸、そこから離れた関西と山口の反応は当然違っていたが、やはりそこには通底するものがある。

第二会場のカスコ・ショップでは《核・家族》(2012年)が見られる。一階から地下一階の展示室の壁一面に高嶺家の平和な家族写真と世界中でなされてきた核実験の歴史を展示されている。平和な生活の裏で核実験が膨大な回数おこなわれ、日本の平和はアメリカの核兵器によって守られきたという事実が示唆されている。折りしも4月9日にはオランダのデン・ハーグにおいて、日本やオーストラリア、オランダなど核兵器を保有していない10ヵ国で構成する軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)の外相会合が開催されたところである。これからの原発を含めた核のあり方を話し合うためには、これまで見えていなかった問題を考察しなければならないだろう。高嶺の作品は、美術の力によってこれらの問題を明らかにしようとしている。

高嶺格<母と姉と松島>1989、
《核・家族》のインスタレーションより
「高嶺格:ジャパン・シンドローム―ユトレヒト・ヴァージョン」は7月6日まで開催(月曜日休館)

 








カスコ Casco
Nieuwekade 213-215
3511 RW Utrecht
The Netherlands
http://www.cascoprojects.org/
カスコ・ショップ Casco shop
Voorstraat 88
3512AT Utrecht
The Netherlands
開館時間:
火曜日-日曜日12:00 – 18:00
休館日 毎週月曜日