2017年7月8日土曜日

アルプ―かたちの詩

Fig.1 Jean Arp, Cloud Shepherd, 1953, Kröller-Müller Museum, Otterlo,
photo: Marjon Gemmeke

ハンス・アルプ (1886-1966)は、フランスとドイツの文化が交じり合うストラスブールで生まれた。フランス語とドイツ語を自在に操るアルプは詩人として出発し、その後、彫刻家、画家としてフランス、ドイツ、そしてスイスで活躍した。オランダのクレラー・ミュラー美術館では、アルプの彫刻や絵画、詩、出版物などを含め80点を展示する「アルプ―かたちの詩」展を開催している(fig.2)。

Fig.2 Overview Arp: The Poetry of Forms, Kröller-Müller Museum, Otterlo,
photo: Marjon Gemmeke
かたちと詩
アルプの作品は、見るものにぬくもりを感じさせるやわらかな曲線と詩的な題名-《森の中で失われた彫刻》《異教の果実》など―が特徴である。代表作品である《雲の羊飼い》(fig.1)には羊飼いの姿は認められないが、曖昧な造形とおとぎ話のような題名によって、詩と夢想的な世界を愛したアルプの世界観が表現されている。作品の丸みを帯びたフォルムとそこから伸びる突起物は、生物や成長過程の果物を連想させる。さまざまな形態を生成し、変容していく自然に対するアルプのあたたかな眼差しが感じ取れる。


アルプの宇宙
第一次世界大戦をきっかけに、アルプは既成の価値観を打ち破るダダイズムの創始に関わった。愚かな戦争を導いた機械文明や人間中心的な考えを否定し、自然あるいは自然のように意味をもたないものを志向した。草木や雲、星など宇宙のあらゆる自然物と自らの作品を同列に捉えるアルプは、抽象的でやわらかな造形と詩によって自らの理想の宇宙を形成した。

「アルプ―かたちの詩」展は9月18日まで(月曜日休館)


クレラー・ミュラー美術館 Kröller-Müller Museum
Houtkampweg 6
6731 AW Otterlo
The Netherlands
www.krollermuller.nl/visit
開館時間:
火—日曜日、祝日* 10:00—17:00(彫刻庭園は16:30まで)
*イースター、4月27日、5月5日、キリスト昇天祭、聖霊降臨祭、12月25日
休館日   月曜日、1月1日