Lloyd Hotel & Cultural Embassy |
一つ星から五つ星の客室が一つのホテルに混在するというスタイルは、ロイドホテルの他に類をみない。客室の中は、7,8人用の長いベッドとグランドピアノが置かれたり、コンサート用の防音設備を備えたり、バスタブとブランコを中心に置いた天井裏や、巨大なキッチンがあったり。オランダらしい遊び心あふれるデザインで埋め尽くされている。
可動式のインテリアも多く、廊下に置かれた家具も自由に使ってよい。一般のホテルとは逆に、浴室とトイレを、あえて部屋の中心などの目に触れる場所に備えたこれらの客室では、備え付けの間仕切りを出し入れしたり、ベッドを横目にシャワーを浴びたり、浴槽につかるという、普段の生活とは全く違う時間と空間の使い方を提供、提案してくれる。
五つ星の部屋。浴室部分のデザインはMVRDV。 |
アムステルダム港東側の波止場にあるロイドホテルの名前の由来は、建物の元々の所有主である船舶会社ロイド。南米に向かう移民の健康診断・宿泊場として建設され、当時は一日最大900人が寝泊まりしたそうだ。1935年にロイド社が倒産した後、ドイツの占領下におかれていた第二次世界大戦中には、対独抵抗地下運動により捕らえられた人々を収容する場所として使用された。終戦後は一般の刑務所として、また後に少年院として使用された期間を経て、80年代後半からはアーティストのスタジオスペースとして利用されるようになった。
アーティストが制作、暮らし、交流していた1989年から1999年。彼らによって、それまで陰鬱で閉塞的な印象を作り出していた壁が取り払われ、それまでとは一転して開放的な空間と雰囲気が生まれ、様々な人が行き交うようになったという。アーティスト達の開放的で独創的な精神は、ホテルの創始者であるスザンヌ・オクセナー、オットー・ナンにより、現ロイドホテル&文化大使館 Lloyd Hotel & Cultural Embassyに受け継がれ、様々な形で建物のあちこちに顔をのぞかせている。
建物をホテル用に改築するに際して最重要視されたことは、「暗い歴史からの解放」、「空間を生かしつつ遊びの感覚を入れる」ことであった。オランダの建築集団MVRDVは、建物の中央部分を吹き抜けにし、明るく開放的な空間を作り出した。建物内では、文化大使館というだけあって常に現代美術、デザイン作品に囲まれる。一例として、最上階にはスーチャン・キノシタの作品が、地元でも評判の高いカフェ&レストラン入り口にはアムステルダム在住の作家、渡部睦子によるインスタレーション「LLOYD LIFE」がある。さらにカフェ上層部には展示やワークショップのためのスペースと図書館が設けられていて、来館者は自由に歩き回ることができる。 デザインとアートが集約され、五感で体験する事ができるロイドホテル&文化大使館。歴史を踏まえ尊ぶその姿勢と発想に魅了された。
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ロイドホテル&文化大使館 Lloyd Hotel & Cultural Embassy
Oostelijke Handelskade 34
1019 BN Amsterdam
The Netherlands
http://www.lloydhotel.com
t: +31205613636
1019 BN Amsterdam
The Netherlands
http://www.lloydhotel.com
t: +31205613636