2016年6月21日火曜日

「税関吏ルソー」

Fig.1 Henri Rousseau, dit Le Douanier Rousseau (1844-1910) La charmeuse de serpents, 1907 Huile sur toile, 167 x 189,5 cm Paris, musée d’Orsay © RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski

19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで活動した画家アンリ・ルソーの作品を、「アルカイスム」をテーマにひもとく展覧会がパリのオルセー美術館で開催中である。本展では、ルソーの才能をいち早く評価し、老画家を敬愛したピカソをはじめとするモンマルトルの前衛画家たち、ルソーの系譜をひく素朴派の画家たちの作品と並べ、ルソーが近代美術に与えた影響を考察している。

新しい表現
アンリ・ルソーはパリ市入税関の職員として働きながら独学で絵を学んだことから「税関吏ルソー」と呼ばれた。アカデミックな教育を受けていないゆえの素朴で生硬な表現は、新しい表現方法としてパリの前衛的な画家たちに大きな影響を与えた。

近現代の新しい世界
ルソーの作品の特徴は、素朴な表現方法で描きながらも同時代の目新しい事象を題材に選んだことだ。例えば、《ピエール・ロティ》の背景には煙を吐く工場の煙突を描き、《風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)》では、パリ万博の高揚した雰囲気のなかに万国旗を掲げた船舶や気球などを描いている。また、《蛇使いの女》(fig.1)や《夢》に描かれた異国情緒あふれる背景も、植民地の広がりによってもたらされたこれまでになかった風景である。新しい世界を新しい表現で描くルソーに、若い画家たちは惹かれたのかもしれない。

「税関吏ルソー」展は7月17日まで(月曜日休館)
オルセー美術館 Musée d'Orsay
1 Rue de la Légion d'Honneur
75007 Paris, France
+33 1 40 49 48 14
http://www.musee-orsay.fr/en/
開館時間:
9:30-18:00 (月曜日休館、木曜日は21:45まで)