fig.1, J.M.W. Turner, Rain, Steam, and Speed – The Great Western Railway, 1844, ©The National Gallery, London |
ターナーがこの作品を描いたのは1844年、69歳になる年だった。弱冠26歳のときに英国美術界の権威であるロイヤル・アカデミーの正会員にもなった早熟の画家とも呼べるが、その後も研鑚を続け、生涯を終える76歳まで新たな表現を探求し続けたゆえに生まれた作品である。
彼は神話や歴史の舞台として描く歴史的風景画からロンドン近郊の親しみやすい風景まで、あらゆる種類の風景画を描いた。またその対象も英国内にとどまらず、ヴェネツィアやローマ古代遺跡の景観など、旅行で訪れたさまざまな場所を描いている(fig.2)。研究対象が幅広いターナーであるが、その画業において一貫しているのは光の表現の追究である。晩年の作品では、光あふれる空間の中にすべてを溶け込ませるように描いている。当時、先鋭的過ぎると批判されたこの光の表現方法は、後年、モネなどの印象派の画家たちに大きな影響を与え、今日でもターナー作品のなかで最も評価の高い時期とされている。
「晩年のターナー」展で見られるターナーには、老いによる制作意欲の衰えや悲観的なようすは微塵も感じられない。自然の劇的な変化や近代化による生活の変貌の様子を光のなかに描き出すべく旺盛に制作を続けた彼の姿が見える。
「晩年のターナー」展は、2015年1月25日まで開催(無休)。
テート・ブリテン Tate Britain
Millbank
London SW1P 4RG
United Kingdom
http://www.tate.org.uk/visit/tate-britain
休館日なし
London SW1P 4RG
United Kingdom
http://www.tate.org.uk/visit/tate-britain
開館時間:
10:00-18:00休館日なし