2014年5月10日土曜日

ロッソ、ブランクーシ、マン・レイ

図1_Constantin Brancusi, La Muse endormie,1910. Arthur Jerome
Eddy Memorial Collection.
The Art Institute of Chicago. © 2013 c/o Pictoright Amsterdam /
Medardo Rosso, Enfantmalade, © 1909. Private collection /
Man Ray, Noire et blanche, 1926. © Man Ray Trust /
ADAGP - PICTORIGHT / Telimage - 2013 / Design: Thonik
現代彫刻への道を切り開いた三人の彫刻家、ロッソ、ブランクーシ、マン・レイの展覧会がオランダのロッテルダムにあるボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館で開催中である。彫刻作品40点と彼らが自ら撮影した写真60点以上が並べて展示され、写真を通して芸術家の視点や制作過程に焦点を当てる。

20世紀初頭、写真が一般の人でも撮影できるようになると、芸術家のなかに自分の作品の記録写真を撮るものがあらわれた。ロッソ、ブランクーシ、マン・レイの三人も自らの作品を撮影したが、アングルや背景を変えたり、写真を再加工したりすることによって彫刻作品の創作の意図がより正確に伝わるように工夫した。ロッソは彫刻に印象主義的手法を取り入れ、光が彫刻に及ぼす効果を考えて形態を大胆に省略し、一瞬の表情と周りの空気を切り取った。彼は絵画のような彫刻と評される作品をソフト・フォーカスで撮影して輪郭を曖昧にすることで、光と戯れる彫刻を表現した。そののち写真を切り貼りしてコラージュにしたり、インクで描き込んだりと手を加えて次作の構想を練ることもあった。

図2_Constantin Brancusi, Princesse X (Princess X),
© 1930, gelatin silver print, 29.7 x 23.7cm.
Collection Centre Pompidou, MNAM-CCI, Paris.
© 2013 c/o Pictoright Amsterdam.
Photo Bertrand Prévost.
現代彫刻の父として目されるブランクーシは、人物や動物の姿を抽象化し単純な形で表現
した。彼はマン・レイの助けを借りてアトリエに暗室を構え、マン・レイや交流のあった写真家から撮影方法を学んだ。ブランクーシは生前、自ら撮影・現像した作品写真以外のものが世に出回ることを認めず、空間のなかで作品がどのように見えるのかについて強いこだわりを持っていた。彼の黄金色に磨き上げられたブロンズ作品の写真には光を捉えて強く反射したものが多い。一部がハレーションを起こして白くなってしまったものもある。光の効果を強調することで、作品の力強さが表現されている。

三人目のマン・レイは画家であり彫刻家でもあったが、写真家として最もよく知られている。彼の題材選択は枠に囚われないものであり、既存のものや人体を組み合わせて新しい作品を創り出した。また彼はレイヨグラフと呼ばれる、カメラを用いずに印画紙の上に直接物を置いて感光させることにより物体の姿を写しとった。レイヨグラフは現実のものを用いながらも、つかみどころのない世界を創り出している。

彼ら三人の彫刻家の写真作品は、芸術家の目を通して彫刻を知ることができる。展覧会場では、マルチメディアを使って、それぞれの芸術家の写真撮影が体験できるスペースが設けられ、来館者が撮影した写真は美術館のホームページ上で見ることができる。

「ロッソ、ブランクーシ、マン・レイ」展は5月11日まで。(4月21日を除く毎週月曜日と4月26日休館)。


ボイマンス・ファン・ベーニンヘン美術館 Museum Boijmans Van Beuningen
Museumpark 18-20
3015 CX Rotterdam
the Netherlands
www.boijmans.nl/en/
開館時間:
火曜日~日曜日 11:00-17:00
休館日:
毎週月曜日及び1月1日、4月27日、12月25日