2018年3月29日木曜日

チャールズ一世、王とコレクター



17世紀のイングランド国王であったチャールズ一世は、当時、世界的に有名なアート・コレクターでもあった。その所蔵作品点数は、絵画約1500点と彫刻約500点に上り、ティツィアーノ、ホルバイン、デューラー、ルーベンス、ヴァン・ダイクなどの作品が多くを占めていた。清教徒革命で処刑された後に彼のコレクションは売却されるが、王政復古の後、いくつかは買い戻されている。しかし、ルーブル美術館やプラド美術館など世界各地に散逸している作品も多い。今回初めてそうした作品をいくつか「里帰り」させ、既に買い戻された作品と合わせた150点による<チャールズ一世のコレクション展>を、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催している。

ヴァン・ダイクが描いたチャールズ一世
展覧会の中核をなすのは、ヴァン・ダイクが描いた肖像画群である。ヴァン・ダイクは優雅な肖像画を得意とし、くつろいだ雰囲気で優雅さと気楽さとが入り混じった表現で肖像画を描いて貴族的肖像画の範例を打ち立てた。後半生を国王チャールズ一世の宮廷画家として過ごし、国王の肖像画を40点ほど描いた。今展覧会には《チャールズ一世とヘンリエッタ・マリア、王太子チャールズと王女マリーの肖像画》、2枚の騎馬肖像画《馬上のチャールズ一世とサン・アントワープの領主の肖像》《チャールズ一世騎馬像》などが展示され、その中でも最も印象的なのは《チャールズ一世の肖像》(fig.1)である。田園地帯を散策したのち、短い休憩をとるために馬から降りたばかりのチャールズ一世はくつろいだ様子でこちらを見ている。威厳に満ちた国王というよりも優雅さと気楽さとが入り混じった穏やかな人物として描かれている。

国王のコレクションが育んだイングランド美術
チャールズ一世が愛好し収集したマンテーニャやティツィアーノ、ルーベンスらの作品は、同時代の芸術家たちの創作意欲を触発し多くの傑作を生みだすきっかげとなった。チャールズ一世のコレクションを概観すれば、活気あふれる17世紀イングランドのアートシーンが明らかになるだろう。

「チャールズ一世、王とコレクター」展は2018年4月15日まで


ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ Royal Academy of Arts
Burlington House, Piccadilly,
London, W1J 0BD
The United Kingdom
+44 (0) 20 7300 8090
https://www.royalacademy.org.uk/
開館時間:
月—木、土、日 10:00-18:00
金       10:00—22:00
休館日 なし