Fig.1 Jan van Eyck, Portrait of Giovanni (?) Arnolfini and his Wife and ‘The Arnolfini Portrait’,1434, Oil on oak, 82.2 x 60 cm, National Gallery, London © The National Gallery, London |
ラファエル前派とファン・アイク
15世紀にヤン・ファン・アイクが描いた《アルノルフィーニの夫妻》(fig. 1)に魅せられた若い画家たちが、19世紀のイギリスにいた。ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの三人である。彼らはラファエロ以前のイタリアやフランドル芸術のもつ誠実で精神的な在り方を理想に掲げてラファエル前派を結成し、その理想を《アルノルフィーニの夫妻》に見出した。描かれないはずの世界
彼らはファン・アイクから深く豊かな色彩や事物の精緻な質感描写など多くのことを学んだ。その中で最も魅了されたのが、《アルノルフィーニの夫妻》で使用された絵画空間の中にもう一つ別の世界・空間を作り出す道具としての鏡である。ファン・アイクは背景にある丸い鏡のなかに自分の姿を描き、画家自身が夫妻の婚礼に立ち会った証人であることを示している。Fig.2 William Holman Hunt, The Awakening Conscience, 1853, Oil on canvas, 76.2 x 55.9 cm © Tate, London (T02075) |
鏡に魅了されたラファエル前派
多くのラファエル前派の画家たちは、鏡のある室内を描いた。ハントの《良心の目覚め》(fig.2)では庭園を映し出す大きな鏡がある。愛人の膝に座っていた女性は視線の先にある庭を見たことによって、突然、良心に目覚め、愛人の膝から立ち上がって自堕落な生活から抜け出そうとしている。ラファエル前派の画家たちが好んだ「アーサー王伝説」に出てくる「シャロットの乙女」の物語でも鏡が重要な役割を担っている。シャロット姫は外界を直接見ると死ぬ呪いをかけられ、鏡を通してしか外の世界を見ることができないのだ。ジョン・ウィリアムス・ウォーターハウスが描いた外界を映す鏡には大きな亀裂が入り、恋しい男性を見たいと願ったばかりに死ぬ運命をたどるシャロットが暗示されている。「反映―ファン・アイクとラファエル前派」展は2018年4月2日まで
ロンドン・ナショナル・ギャラリー The National Gallery, London
Trafalgar Square
London WC2N 5DN
The United Kingdom
+44 (0)20 7747 2885
www.nationalgallery.org.uk
金 10:00—21:00
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開館時間:
月—木、土、日 10:00-18:00 金 10:00—21:00
休館日:
1月1日、12月24-26日