レンブラント作品をめぐりオランダとフランスが政治決着
オランダとフランスがレンブラントの名作を「共同購入」することになったというニュースが、欧州のアート業界の関心を集めている。
その作品とは、17世紀オランダ黄金時代の巨匠・レンブラントによる2枚1組の肖像画(fig.1)。モデルはオランダ上流階級の若い男女で、1634年、結婚を記念して描かれたものだという。19世紀末、フランスの富豪・ロートシルト家に売却され、現在に至るまで同家のコレクションの一部であり続けた。
この作品が1億6000万ユーロ(約220億円)で売却されることとなり、オランダ・国立美術館は2作品両方を所有するため資金調達を目指したが、同時にフランス政府も、ルーヴル美術館のコレクションに加えるため、片方のみの購入を画策したという。
fig.1 レンブラント Maerten Soolmans と Oopjen Coppit の肖像画 |
結局、ペアで展示されるべき2作品を2カ国で分け合う結果となったが、今後、片方をお互い貸し出しあって必ず「カップル」として展示する約束だという。
高額な美術品の購入はもちろんのこと、文化活動には資金不足がつきもの。今回話題となったレンブラント作品は、2カ国でいわば「共有」する形で決着したが、昨今の財政難で国庫からの支出は益々困難になっている。そこで注目を集めているのがインターネットを活用し、一般市民から広く浅く資金を集める「クラウド・ファンディング」だ。
美術品購入に有効なクラウド・ファンディング
この「クラウド・ファンディング」の手法を使った寄付キャンペーンが、現在、パリの2つの美術館によって進行中だ。
・ルーヴル美術館《矢の切れ味を試すクピド》
fig.2 ジャック・サリー《矢の切れ味を試すクピド》 |
まず、ルーヴル美術館が予定する大理石像《矢の切れ味を試すクピド》(fig.2)購入のためのクラウド・ファンディング。ルイ15世の愛妾、ポンパドゥール夫人が彫刻家ジャック・サリーに注文したもので、ぼっちゃりした指先で矢の先に触れる可愛らしいしぐさに目を奪われる。
—《矢の切れ味を試すクピド》募金ウェブサイト(日本語)
・ギメ東洋美術館「甲冑」
もう一件は、アジア美術を専門とするギメ東洋美術館が購入を目指す日本の「甲冑」。17世紀に制作されたもので大変保存状態もよい逸品とのこと。
—「甲冑」購入キャンペーン・サイト(仏語のみ)
いずれも、美術館の公式ホームページ上に特設ウェブサイトが置かれ、作品情報、クレジットカードの決済フォームのほか、資金の集まり具合が一目でわかるようになっている。
寄付するメリットとして、募金額の多寡によって、美術館の無料チケットから鑑賞のための夜会への招待まで、様々な特典が準備されている。美術ファンにとっては、国宝級の傑作を身近に感じるまたとない機会ともいえそうだ。